抄録
伝統的建築物の多くは左官壁が使用されている。東日本大震災では数多くの伝統的価値がある左官壁建物が被害を受けた。復旧・復興のまちづくりには地域の歴史や文化の記憶を留め継承することが必要不可欠であり,被災建物を維持・保全するためには,損傷後の事後補強や改良を施す技術が不可欠である。しかし,伝統的工法の仕組みや材料調達の方法などが関係し,部分的な補強や補強工事が困難であったり,オーセンティシティーの観点から歴史的文脈に沿う完全補修を行うことで建築主に多額の資金を要する場合は経済側面の観点から維持・保全は困難となる。上記を踏まえ,本研究では歴史的建築物における左官壁の自然災害による予防保全,損傷後の事後保全を実現するために,その3までの漆喰壁・漆喰天井を補修・補強する工法を中塗り・下塗りの左官壁に適用した工法を提案する。