抄録
漆喰系材料を多用する遺産的建築物の一例として,秋田県横手市増田地区の左官蔵建物があげられる。ここでは,冬期の豪雪を免れるために,漆喰仕上げ土蔵造りの内蔵が,鞘(サヤ)の中に納まる形で現在も使用できる状態にあり,そのいくつかは登録有形文化財に指定され,今後の活用に向けた老朽化対策活動が推進されている。当該建物の左官壁は,仕上げ材として本漆喰や黒漆喰が多用されており,温湿度変化が多用な状況下で,気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムとなり硬化して躯体を保護する役割を担っている1,2)。また低温低湿度環境下により,腐朽菌等による表層劣化状態が回避された状況が想定され,漆喰に特有の殺菌消毒作用や細かい結晶体の集合体であることによる,調湿作用なども生じていると思われる3)。本研究は,これらの状況を鑑み,漆喰表面の温湿度環境や配合の違いによる熱的影響を赤外線照射時の温度変化による評価をはじめ,紫外・可視・近赤外線反射スペクトルからの材料の反射特性に関わる基本的性質の評価,そして左官建物の多用な熱移動の状況を踏まえ,材料自体の熱伝導率測定を評価し,本漆喰・黒漆喰の種類・調合要因と熱的性能を踏まえた左官壁の建築躯体への耐久性への影響を実験的に考察する。