2019 年 39 巻 p. 83-94
森林と人間や社会との関係性の希薄化が進む中、本稿では、企業と地元組織が協定を結び、連携して森林整備を行う、「企業の森づくり」活動および都道府県による支援制度に着目して、その実態解明と今後の研究および政策に向けた示唆の導出を目的とした。和歌山県、京都府及び滋賀県を調査地とする聞き取りおよび参与観察の結果を受けて、1府2県における支援制度の共通点と差異、「企業の森づくり」活動特有の意義、活動の変化・展開に必要な要因を検討し、今後の研究課題としてこれまで森林政策論の中で十分に論じられてこなかった一般企業の森林政策における役割の検討、政策の望ましい一つの方向として、参加のハードルを下げ、CO2吸収量の認定などの客観的指標も整備した上で、行政や中間組織が個別の活動の積極的展開を推進する体制づくりを挙げた。