抄録
中日本入会林野研究会は発足以来40年を経て、この間、激動の入会林野を直視してきた。しかし、その変化はあまりにも大きく、議論は尽きない。本稿では、入会林野の法人化を“縦糸”に、入会林野利用における造林への転換を“横糸”に織り込んで、将来に引き継ぐべき研究の課題の一端を明らかにしようとした。そのため、生産森林組合への法人化に関わる議論に止まらず、入会林野利用が造林に始まる林業生産へと転換したことに注目し、その変化が生産森林組合に与えた影響を論じた。その結果、生産森林組合の理念である「所有と経営の一致」を維持することは難しく、むしろ、分収契約による「所有と経営の分離」に至ったことを指摘した。さらに、昨今、林政サイドの立法による経営権譲渡の動きに対して、経営権の譲渡に走らず、生産森林組合として新たな林業生産に取り組むべきものとして、林業の方向を論じた。