入会林野研究
Online ISSN : 2434-3927
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享保13年、下総国香取、同海上郡下の入会紛争
幕府評定所の入会裁判(3)
後藤 正人
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 40 巻 p. 78-82

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抄録
幕府評定所の入会裁判の3回目として、2つの入会裁判を検討した。第1の入会裁判は下総国香取郡下の2つの村の間での争論である。この両村は、現在で言えば共に千葉県香取郡神崎町に属する。第2の入会裁判は、下総国海上郡の4か村と同じ海上郡の1か村との間の争論である。この村々は全て現在の千葉県銚子市内に属している。特に数村入会地に負担金がある場合に、入会「権」の範囲は一般に各村高に比例することになり、更にこの村高の増加は村方の一方的な主張では認められず、幕藩領主によって認められることが必要とされた。また前2回では、評定所の裁判史料は「裁許之事」と出て来た。但し豆州賀茂郡下の入会訴訟は、その中では「取替證文之事」である。今回も「取替證文之事」とある。裁判官の苗字・官名は消えたが、「證文取替」を行った双方の「代表者」の名前が出てくるのは有益である。更に当事者たちがどういう点を認め、或いはどういう誤りを認めて謝り證文を出したとか、さらに裁判所が依って立つ文書や絵図面・線引などに対する村民たちの法知識や法意識を窺うことも出来る。
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© 2020 本論文著者
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