1979 年 20 巻 1 号 p. 9-15
本研究の目的は,高校物理における力学的エネルギーから熱への学習過程を,エネルギーの変換という立場から統一して実験する方法を開発することである。力学的エネルギーを熱に変える実験は,ジュールの実験やアルミ円筒をナイロン糸で摩擦して熱の仕事当量を求める実験(都立教育研究所方式)等いろいろあるが,いずれも液体や固体を使っている。本案は,気体を使い新たに開発した簡易なサーミスタ温度計で運動物体のエネルギーが消失した際に発生する熱を短時間の間に数量的に測定する点に特徴がある。実験方法の概略は次のとうりである。①気体の断熱圧縮による温度上昇を利用して,力学的エネルギーを熱に変換する。②微少温度変化を測定し得るサーミスタ温度計を用いて,気体の湿度変化を測定する。それにより,位置エネルギーおよび運動エネルギーが消失したときの気体の湿度上昇がおもりの落下距離および力学台車の速さの2乗に比例し,また,おもりや力学台車の質量にも比例する結果が得られた。