1984 年 24 巻 3 号 p. 1-11
幼稚園児から大学生まで,水溶液についてもっている概念を調べるため,調査問題により解答させ,その結果を集計・分析し,次に述べるような結果を得た。(1)水と食塩水を区別する方法では,味覚による方法が顕著である。(2)水と食塩水を区別する方法では,科学的操作を使用する方法が,小学校5年生から急に増加する。(3)水と食塩水を区別する方法では,生活経験の適用が,小学校3年生から出現率が高くなる。(4)水と食塩水を区別する方法では,科学的知織の応用が,中学生以降に出現する。(5) 食塩水の上と下の濃さのちがいについては,小学校6年生から正答率が急増する。(6) 角砂糖を早く溶かす方法では,攪拌する方法が顕著である。(7) 角砂糖を早く溶かす方法では,熱する方法が小学校2年生から急に増加する。(8) 砂糖,小麦粉,粉ミルク,粉石けんの中,水に溶けるものとして,砂糖,粉石けんの他に,小麦粉,粉ミルクを挙げているものが幼稚園児,小学校児童生徒に多い。(9)小麦粉,粉ミルクが水に溶けると思っているものが,中・高校生にもいる。(10) 食塩水は,上部より下部の方が濃いと思っているものが,中・高校生,大学生にもいる。(11)水と食塩水を区別する方法では,科学的操作,科学的知識の応用が,中・高校生,大学生と増加するが,ろ紙でこす,顕徴鏡でみる,リトマス紙で調べるなどのナンセンスなものがある。(12)角砂糖を早く水に溶かす方法では,高校生,大学生の中に,加圧する,酸素,触媒を加える,強酸を加えるなどのナンセンスなものがある。