日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
24 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 林 良重
    1984 年24 巻3 号 p. 1-11
    発行日: 1984年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    幼稚園児から大学生まで,水溶液についてもっている概念を調べるため,調査問題により解答させ,その結果を集計・分析し,次に述べるような結果を得た。(1)水と食塩水を区別する方法では,味覚による方法が顕著である。(2)水と食塩水を区別する方法では,科学的操作を使用する方法が,小学校5年生から急に増加する。(3)水と食塩水を区別する方法では,生活経験の適用が,小学校3年生から出現率が高くなる。(4)水と食塩水を区別する方法では,科学的知織の応用が,中学生以降に出現する。(5) 食塩水の上と下の濃さのちがいについては,小学校6年生から正答率が急増する。(6) 角砂糖を早く溶かす方法では,攪拌する方法が顕著である。(7) 角砂糖を早く溶かす方法では,熱する方法が小学校2年生から急に増加する。(8) 砂糖,小麦粉,粉ミルク,粉石けんの中,水に溶けるものとして,砂糖,粉石けんの他に,小麦粉,粉ミルクを挙げているものが幼稚園児,小学校児童生徒に多い。(9)小麦粉,粉ミルクが水に溶けると思っているものが,中・高校生にもいる。(10) 食塩水は,上部より下部の方が濃いと思っているものが,中・高校生,大学生にもいる。(11)水と食塩水を区別する方法では,科学的操作,科学的知識の応用が,中・高校生,大学生と増加するが,ろ紙でこす,顕徴鏡でみる,リトマス紙で調べるなどのナンセンスなものがある。(12)角砂糖を早く水に溶かす方法では,高校生,大学生の中に,加圧する,酸素,触媒を加える,強酸を加えるなどのナンセンスなものがある。

  • 小川 正賢, 砂押 千里, 高瀬 一男
    1984 年24 巻3 号 p. 13-20
    発行日: 1984年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    小学校5年「たねの発芽」単元では,植物の芽ばえが地表に姿を現わす段階と幼根が種皮を破って出てくる段階を両方とり扱い,しかも本単元で初めて使用される用語である,「発芽」という表現でこれらを教授している。このようなとり扱いは,児童の発芽認識にどのような影響を与えているであろうか。本研究では,このような問題意識から小学生の発芽認識を質問紙法による調査によって調べ,次のような結果を得た。(1) 「たねの発芽」単元を履習する前の児童の約半数は「発芽」という用語を全く知らないこと。(2)また,「発芽」という用語を知っている児童の大多数は,「植物が芽を出すこと」「芽が出ること」と理解していること。(3)本単元を履習した児童は,「種子から幼根が出てくる段階」と「芽ばえが地表に出てくる段階」をいずれも「発芽」と認識していること。(4)彼ら自身は,「発芽」を「植物が芽を出すこと」 I芽が出ること」と理解していると考えているが,実際には,「何かがどこからか出現してくること」と考え,さらには,「出てきたるもの」は,「芽」であると考えていると思われること。これらの結果から,本単元の指導にあたっては,「発芽」という用語の使用をやめて,「芽ばえが地表に現われる」とか「たねから根が出る」といったより具体的な表現を用いるか,あるいは,「幼根が種皮を破って種子から出てくる段階」をとり扱わず,「芽ばえが地表に現われる段階」のみをとり扱うかするなどの改善が必要であることを提言した。

  • 野々山 清
    1984 年24 巻3 号 p. 21-29
    発行日: 1984年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    (1)従来異なった実験材料を用いていた発生過程の観察・体細胞分裂の観察・染色体標本作製をすべてニワトリを材料として,実験実習を行い,これらの生命現象を統合的に理解できるようにした。また,「ヒトの生物学」は重要であるが,実験実習としては教材化が困難である。そのため,「ニワトリの生物学」は,両生類以下では得られない学習材料を提供するものである。本研究で用いた血球に関しては,生理現象と発生・分化を結びつける視点を持っている。(2)ニワトリ2日胚の胚の真上にあたる卵殻および卵殻膜を取り除き,観察用の窓をあけ,セロテープで封じて加温を続ける。窓あけ後48時間 (4日胚)で約50%の生存率であった。この窓を通して,形態形成・分化の劇的変化を生徒は観察することができる。(3)従来,植物根端を学習材料として行われてきた体細胞分裂の観察を,動物細胞である鶏胚血球を材料として行った。 4日胚血液をスライドガラスに塗抹し,フォイルゲン染色およびギムザ染色して観察を行った。分裂中の血球の割合は,4日胚で3.4%であった。(4) 鶏胚血球を用いて染色体標本作製を行った。 4日胚の卵殻に窓をあけ,コルヒチンを添加して加温を続ける。コルヒチン添加1時間後に採血し,低張処理および固定を行う。少量の固定液に浮遊させた血球をスライドガラスに落とし,火炎乾燥する。これをフォイルゲン染色して観察を行う。この方法の利点は,培養を必要としないこと,熟練の必要な押しつぶし法を必要としないことである。実習に必要な時間は,コルチヒン処理を含めて2時間以内である。

  • 田中 昭夫, 谷本 勝太郎
    1984 年24 巻3 号 p. 31-35
    発行日: 1984年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    高校物理実験の指導上の問題点の一つは,事後指導における実験レポートの指導である。実験レボートのうち.データと計算結果の部分をマイコンに評価させる方法を研究した。評価の観点は,測定回数.測定値の有効数字,計算の検算.計算値の有効数字,実験結果と物理定数表の値との比較,データのばらつき,グラフから求める諸定数などが考えられ,実験題目によって必要な観点をプログラムする。生徒は実験レポートを書いた後,データと計算結果をマイコンに入力して評価を受ける。指導教師はこの部分をチェックして,実験ノートの検討事項などを中心に評価,指導する。具体的な実施例として"記録タイマーによる重力加速度の測定”を紹介した。愛媛県総合教育センターで実施される小・中・高校教員対象の理科実験講座で試行した結果は満足なものであり,ほとんどマイコンに触れた経験のない教師でも容易に操作することができた。マイコンが小・中・高校の理科実験室へお目見えする日も近いので,一つの効果的な使用法として,この研究を続けていきたい。

  • 藤島 弘純
    1984 年24 巻3 号 p. 37-42
    発行日: 1984年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    二倍体ムラサキツユクサ(Tradescantia paludosa, 2n=12)と四倍体ムラサキツユクサ(T.reflexaまたはT.virginiana, 2n=24)の人工種間交雑によって,三倍体ムラサキツユクサ(F1,2n=18)を作出した。このF1梱物の減数分裂第一中期では6個の三価染色体が観察でき,二倍体および四倍体ムラサキツユクサのゲノム構成はAAおよびAAAAと推察できた。二倍体と四倍体の種問交雑には,早朝に開花したばかりの花から除雄する方法で作業能率をあげることができた。人為三倍体は多年性を示し,その栽培管理も至極容易であることがわかった。本雑種は,ゲノム分析をふまえた減数分裂の実習教材としての利用価値が高いと判断した。

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