日本理科教育学会研究紀要
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用語「発芽」が児童の発芽認識に及ぼす影響
小川 正賢砂押 千里高瀬 一男
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1984 年 24 巻 3 号 p. 13-20

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抄録

小学校5年「たねの発芽」単元では,植物の芽ばえが地表に姿を現わす段階と幼根が種皮を破って出てくる段階を両方とり扱い,しかも本単元で初めて使用される用語である,「発芽」という表現でこれらを教授している。このようなとり扱いは,児童の発芽認識にどのような影響を与えているであろうか。本研究では,このような問題意識から小学生の発芽認識を質問紙法による調査によって調べ,次のような結果を得た。(1) 「たねの発芽」単元を履習する前の児童の約半数は「発芽」という用語を全く知らないこと。(2)また,「発芽」という用語を知っている児童の大多数は,「植物が芽を出すこと」「芽が出ること」と理解していること。(3)本単元を履習した児童は,「種子から幼根が出てくる段階」と「芽ばえが地表に出てくる段階」をいずれも「発芽」と認識していること。(4)彼ら自身は,「発芽」を「植物が芽を出すこと」 I芽が出ること」と理解していると考えているが,実際には,「何かがどこからか出現してくること」と考え,さらには,「出てきたるもの」は,「芽」であると考えていると思われること。これらの結果から,本単元の指導にあたっては,「発芽」という用語の使用をやめて,「芽ばえが地表に現われる」とか「たねから根が出る」といったより具体的な表現を用いるか,あるいは,「幼根が種皮を破って種子から出てくる段階」をとり扱わず,「芽ばえが地表に現われる段階」のみをとり扱うかするなどの改善が必要であることを提言した。

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© 1984 一般社団法人日本理科教育学会
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