日本理科教育学会研究紀要
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理科教育における観察・記録に関する実験的研究  I ―アジサイとクリの葉を用いた観察・スケッチについて―
田村 直明高野 恒雄
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1984 年 25 巻 2 号 p. 27-33

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抄録

観察と記録は,科学の方法において最も基礎的な位置を占めており,理科の学習はまさにこれらに始まるとも言える。また,観察したことは,記録に表現してはじめて意味のある観察事実となり,一方,記録に表現することは,逆に観察に何らかの触発的効果を及ほすであろう。このように両者は互いに密接にかかわっており,それらの間の関係を知ることは非常に有意義である。本研究では,生物・地学分野において特によく用いられる記録であるスケッチを研究対象に取り上げた。具体的には,小学校6年生に対しアジサイとクリの葉を渡して,自由に観察させる群とスケッチをしながら観察する群とを比較分析した。その結果得られた基礎的知見は次のとおりである。(1) 観察の際にスケッチをすることは,観察の視点を選択的にし,観察を促進するだけでなく,阻害する面もある。(スケッチ効果)(2) スケッチには描いていても,それを観察事実としては意識していないという「意識化されないスケッチ」が存在する。(3) 観察とスケッチとの関係で重要な鍵となるのは,観察対象の「意識化」ということである。

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© 1984 一般社団法人日本理科教育学会
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