1984 年 25 巻 2 号 p. 35-42
科学的記述をする上で定性から定量への橋わたしをするともいうべき,程度や量の強弱・大小などを表すことば(大きい・強い・高い・多いやこれらの反対語など)の小学校理科教科書における使用の実態についての調査結果を報告する。調査の結果,教科書の中で使われていることばの種類や使用数などについて次のような知見を得た。(1) 最も多く用いられていることばは「大きい・小さい・大きさ」であり,次いで「重い・軽い・重さ」であった。(2) 教科書の学年別使用状況については,すべての種類のことばは3年生用の教科書で出そろい,4年生用教科書で大幅に多く使われるようになる。その後も同じ傾向が続いている。また,上級学年用の教科書では,「大きい・小さい・大きさ」は非空間的な量に関するものやことの大小を表すのに使われる用例がふえている。(3) 領域別使用状況に関しては,物理領域における使用が圧倒的に多い。また,ある科学用語に対して,程度や景の強弱・大小などがどんなことばで表現されているかを調べてまとめてみたところ,次の3つの場合に類別できることがわかった。(1) 1つの科学用語に対して,1種類のことばだけが使われている場合。(2) 1つの科学用語に対して,2種類またはそれ以上のことばがそれぞれ異なった意味で使われている楊合。(3) 1つの科学用語に対して,2種類またはそれ以上のことばがほぼ同じ意味で使われている場合。上記の知見に基づき,これらのことばの使用上の問題点や指導上の留意点などを指摘した。また,これらのことばの使い方について,科学用語と抱き合わせて検討することを提言した。