生徒が野外で生の自然現象に直面したとき、彼らはそこからどれだけの事実を読み取り、それらを総合的に解釈したり、抽象化したりできるか、つまり生徒の科学的思考力がどの程度育成されているかを知ることは興味深いことである。ここでは、生の自然を直接体験させることは困難であったので、間接経験としての写真を用いて評価せざるを得なかった。本研究で明らかにされた知見は、次のように要約される。(1)写真を見て気づいたことを自由に記述させた場合は、 「山奥」、「緑の木」、「紅葉」、「雪」などにはよく気づくが、 「谷の地形や川原の様子」などについての観察は行き届いていない。(2) 課題を設定し、観察の視点を与えて写真を見せた場合は、「川の流れる向き」、「写真の地域」、「斜面の角度」などは6~8割の者が適切な回答をしている。しかし、さらに観察を深める必要のある「樹木の種類」や観察の結果を表現する「地図化」などの項目については約 2割の者が妥当な回答をしているにすぎない。(3)写真の観察の際、事実の読み取り、事実の解釈やまとめなどの「科学的思考」が十分に働いているとは言えない。