日本理科教育学会研究紀要
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教育学部学生の初等理科教育指導上の潜在不安要因の因子分析法による研究
飯田 真也碇 寛丹治 一義
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1985 年 26 巻 2 号 p. 35-43

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抄録

教育学部学生が将来小学校教員になった場合の理科教育指導上の不安要因を因子分析法により分析した。小学校理科学習指導要領の中から、小学校で指導すべき内容を25項目抽出し、それらに対する指導上の不安要因を学生達に記述式に書かせた。得られたすべての不安要因を22項目に集約し、これらに対し、 SD法により、不安の程度を再度解答させた。これを因子分析法により解析し、指導上の不安の背景にある潜在要因を抽出した。抽出因子の内、寄与の大きい順に、第 1因子は、時間、空間的に巨大なスケールの内容、又観点を変換する必要のある内容に関係した因子であり、複雑な視点変換が要求される内容と関連した因子と考えられる。第 2因子は、理科教材理解不足、知識不足等による不安に関係した因子。第 3因子は、イメージ化困難、視覚化困難に関係した因子である。これらの抽出因子から判断して、特に第 1、第 3因子に注目すると、学生達は、複雑な視点変換の必要とされる内容に対し、指導上潜在的に強く不安感を持っていることが明らかになった。このことは、一方では理科指導上の問題点の指摘にとどまるばかりでなく、学生達が受けてきた、小・中・高校での科学教育での理解困難の潜在要因とも考えられる。すなわち、科学の理解のための基本的能力として、視点変換の概念がきわめて重要であることが示された。

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© 1985 一般社団法人日本理科教育学会
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