日本理科教育学会研究紀要
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科学教育における発生的原理(I)  ―「範例的」から「発生的」へ: M.ヴァーゲンシャインの教授学における重点移行の意味―
大高 泉
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1987 年 28 巻 2 号 p. 13-23

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抄録

ヴァーゲンシャインの自然科学(特に物理学)の教授学における「範例的」から「発生的」への重点移行の意味を、教授論的観点、社会論的観点、陶冶論的観点の三つの観点から解明した。それぞれの観点における重点移行の意味は次の点にある。第一の観点では、当時の自然科学教授においてみられた本来的な自然からの分離を防ぎ、それとの「連続性」を確保することによって、自然科学の「真の理解」を保障し、同時に、自然科学の知識が陶冶知として生徒のうちに成立するのを保障する点、しかもこの保障を範例的原理より一層徹底化する点。第二の観点では、社会における科学者と一般人との分裂を防ぎ、社会的安寧の前提としての「科学についての思慮」を形成するため、上記の「真の理解」を保障する点。第三の観点では、物理学全体の陶冶作用の成立要件である物理学の「アスペクトカラクター」の認識を形成するため、物理学のアスペクトの「生成」過程を強調する点、しかもその際、物理学のアスペクトの精神史的「生成」から、子どもの前科学的自然理解から科学的なそれへ至る連続的な過程の中での物理学のアスペクトの「生成」という「生成」概念の変容に対応する点。

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© 1987 一般社団法人日本理科教育学会
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