日本理科教育学会研究紀要
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Print ISSN : 0389-9039
児童がもつ疑問の領域にみる発達的研究
野村 昇原 稔
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1992 年 33 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

前報において著者等は、児童がもつ「不思議に思うこと」の初発の疑問の意義について検討し、1、2年生の人間生活の領域以外の各領域及び3年生以上の学年では、40分間調査における出現率と初発における出現率の間に高い相関が見られたことを報告した1)。本報では児童の疑問量と疑問対象領域の学年的発達並びに性差について検討し考察を行った。疑問量を一人当たりの平均疑問数でみると、男女とも5年生で最も多く、性差は3年生で最も目立ち、男で2.0問多かった他は差が少なかった。疑問対象領域では『人間生活』についてが著しく高い率を示したことが注目に値する。他の領域についての学年的推移は堀 七蔵2)の第二次世界大戦前、相川高雄・堀内敏3)並びに五十嵐崇夫4)の戦後に行なった調査結果と比較して4者の研究結果の間で全面的な一致点は見付けにくいものの、各結果間相互に可成りの共通する傾向を見付けることができて、児童の環境に応じた発達の傾向がみられた。また、児童の一人当りの疑問数と、疑問対象の4領域での出現率の学年的変化は、同時期の同一市内の互いに3キロメートル以上隔たった3小学校間で大約似た傾向が認められた。

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© 1992 一般社団法人日本理科教育学会
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