1992 年 33 巻 1 号 p. 25-36
これまで、「浮力」の概念についての調査はいくつかなされている。本稿では、中学生と大学生が「水中で物体に浮力がはたらくこと」と「空気中で物体に浮力がはたらくこと」について、どのような理解をしているのか、その実態を調査した。あわせて、学習したことのない「空気中で物体に浮力がはたらくこと」という内容を含む問題に対して、どのような回答をするのかを探ってみた。また、新しく学習した内容が必ずしも適切な見方や考え方を育成することにだけつながるのではないという指摘がなされているが、この点についても調査した。さらに、メタ認知能力を育成するための手がかりを得るために、目の前で実際に実験を見せたり、説明を聞かせたりした後で、中学生と大学生の考え方がどのような影響をうけるのかを調査した。また、考え方を変容させるためには、認知的葛藤場面の提示はどうあるべきかについても考えてみた。その結果、次の6点が明らかになった。1.学習内容の転移不可能性2.考え方を変容させるために認知的葛藤場面のみを導入することの不適切性3.学習内容に対する適切な説明の必要性4.学習者の知識や概念がどのような関係にあるのかを明らかにすることの重要性5.類似した学習内容を豊富に体験することの重要性6.実験内容を具体化する教具開発の必要性