日本理科教育学会研究紀要
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酵素学習におけるアルギン酸カルシウムゲル(ACG)フィルムの応用
藤川 誠岡部 仁近森 憲助片平 克弘村田 勝夫山下 伸典
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1994 年 35 巻 1 号 p. 21-29

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抄録

酵素の存在やその性質は,一般に酵素反応を通じて検出・認識されている。したがって,教育現場においても生徒自身が酵素の関与する反応を直接取り扱いながら,「酵素のはたらき」について学習してゆくことが,酵素に対する理解を深めるためには必要であり,また有効である。我々は,このような考え方をもとに,できるだけ簡便で短時間に明瞭な結果を得るため,ミトコンドリアを固定化したアルギン酸カルシウムゲル(ACG)フィルムを用いる酵素学習用教材を開発した。ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)により,フィルムに固定化されたミトコンドリア内に存在するコハク酸脱水素酵素活性を染め出すと,酵素反応に特有の性質をフィルムの発色程度により示すことができた。さらに,ナイロンメッシュによりフィルムの強度を強化するとともに,抽出に用いる材料の再検討やフィルム作製法の改良を行った。その結果,材料としては肝臓が最も優れていることが明らかとなった。また,厚紙製の型枠や染色用カゴを用いると,比較的均一な厚みを持ったフィルムを,1回の操作で多数作ることができるようになった。このフィルムも,ナイロンメッシュを用いないで作製したフィルムと同様,酵素学習のために用いることができることが実験的に示された。以上の結果を総合すると,ナイロンメッシュにより補強されたニワトリ肝臓ミトコンドリア固定化ACGフィルムは,その取扱いが容易であり,視覚的に酵素反応を捉えさせる教材として,教育現場において,安全かつ効果的な応用が期待できるものと考えられる。また,実際に,この酵素学習用教材を高等学校の授業において活用する場合,その留意点および実験授業の構成例についても言及している。

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© 1994 一般社団法人日本理科教育学会
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