日本理科教育学会研究紀要
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化学反応式を書く能力向上に関する研究ー化学反応式の完成を阻害する要因の究明一
石井 俊行橋本 美彦
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1995 年 36 巻 1 号 p. 7-16

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抄録

本研究は,中学生がうまく化学反応式を作成できない原因を解明することを目的として調査した。その結果次の点が明らかとなった。生徒が化学反応式を正しく完成するためには,その基礎として物質を化学式で表す能力を習得することが不可欠である。また,物質をモデル図で表す能力を習得することは,物質を構成する分子内の原子の結合をイメージさせるために大変重要である。さらに物質を化学式やモデル図で表す能力がありながら,化学反応式を化学式やモデル図を使って表せない生徒が多い。これは,化学反応に関与する物質の分子内の原子間の結合の切断や新たにできる結合を表す際に,原子の数や係数を合わせようとして化学式やモデル図を物質として存在しえないものにつくり変えてしまうためである。以上のことから,次の(1)~(4)の手順で指導すれば,化学反応式で化学変化を表す方法を生徒はより正確に理解することができると思われる。(1) 物質を表す化学式を正確に覚えさせる。(2) 物質を構成する分子内の原子の結合の様子をイメージさせる。(3) 化学反応に関与する物質の分子内の原子間の結合が切れ,他の原子と結合して新たな化合物を形成する過程をモデルでとらえさせる。(4) 化学反応に関与する物質の分子構造をモデルでイメージした通りに化学式で表現させる。

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© 1995 一般社団法人日本理科教育学会
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