1995 年 36 巻 2 号 p. 11-20
現行の学習指導要領に見られる「理解する理科」から「調べる理科」への転換を,環境教育の視点にたった理科教育の中に積極的に導入する必要がある。そこで,小学校高学年において,子どもたちのまわりの環境を定量的に調査し,自然環境への科学的分析を行った。この経験を通して,科学的な見方や考え方を育成するとともに,環境への理解を深め,環境への態度と関わり方を学ぶ学習指導法を検討した。具体的には,子どもたち自身が自分たちの地域の大気汚染を,自作比色計とコンピュータを用いた科学的手法で調査する教具システムを開発し,そのシステムを用いる指導法を実践し検討した。この結果,小学校高学年において定量的な環境調査の教材化は可能であり,その扱いにより環境学習の幅は広がり,内容も深化しうることが明らかになった。また,コンピュータを用いた環境調査では,高度な測定データの解析処理が省略でき,対象物の濃度を直接表示できるなど,子どもたちに測定内容の理解を促す働きがあることが分かった。