1997 年 38 巻 1 号 p. 11-21
理科教育における自己効力感の発達的変化をより詳細に分析するために,小学生用,中学生用の理科教育用自己効力感測定尺度(SESSE),また児童や生徒の認知的方略のメタ認知,及び社会的関係性の一部を測定する尺度(MSCS)を作成し,小学生,中学生及び高校生に実施した。その結果,次のことが明らかになった。1. 小学校から高等学校へ学年進行が進むにつれて,理科学習での自己効力感と認知的方略のメタ認知は連続的に失われていく。2. 小学校6年生と中学校2年生の間で,自己の達成の「統制感」や手段保有感の「努力」や「能カ」,あるいは認知的方略のメタ認知の「自己評価」や「自己制御」の減少が著しく,他者との関係性を示す手段保有感の「教師」や「教える役割」も大きく減少することから,多くの生徒や児童がこの段階で理科の学習意欲を失っている。3. 認知的方略のメタ認知は,「統制感」や手段保有感の「努力」や「能力」との間に比較的強い相関が見られ,また「教える役割」や手段保有感の「教師」も,これらの概念と中程度の相関が見られたことから,いずれも自己効力感を構成する重要な概念と考えられる。