日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
浮力に関する素朴理論:学習者における物体の形状にかかわる素朴理論の構成と学校的な問題を解くことの関連
稲垣 成哲野上 智行住友 弘子
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 38 巻 3 号 p. 205-215

詳細
抄録

本研究の目的は,水中の物体に働く浮力に関する素朴理論について,中学生から大学生にわたって検討することである。とくに,水中における物体の形状と深さに関連する素朴理論間の関係を明らかにするとともに,平らな物体の方が同体積・同質量の立方体や球状の物体よりも大きな浮力を受けるという考え方としての「平ら理論」の実態を解明することである。さらには,平ら理論と学校的な問題の解答の仕方との関係を検討することである。調査の対象者には,質問紙によって6つの問題が課せられた。その結果,次のことが明らかになった。(1)物体の形状と深さの両方の素朴理論をもつ対象者が多い。(2)物体の形状に関係する素朴理論としては,「平ら理論」をもつ対象者が多い。(3)学校的な浮力の問題を正しく解くことのできる対象者の約50%以上が,他の問題には「平ら理論」を適用する。

著者関連情報
© 1998 一般社団法人日本理科教育学会
前の記事
feedback
Top