1998 年 38 巻 3 号 p. 205-215
本研究の目的は,水中の物体に働く浮力に関する素朴理論について,中学生から大学生にわたって検討することである。とくに,水中における物体の形状と深さに関連する素朴理論間の関係を明らかにするとともに,平らな物体の方が同体積・同質量の立方体や球状の物体よりも大きな浮力を受けるという考え方としての「平ら理論」の実態を解明することである。さらには,平ら理論と学校的な問題の解答の仕方との関係を検討することである。調査の対象者には,質問紙によって6つの問題が課せられた。その結果,次のことが明らかになった。(1)物体の形状と深さの両方の素朴理論をもつ対象者が多い。(2)物体の形状に関係する素朴理論としては,「平ら理論」をもつ対象者が多い。(3)学校的な浮力の問題を正しく解くことのできる対象者の約50%以上が,他の問題には「平ら理論」を適用する。