日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
総説
プロテインキナーゼCアイソザイムの細胞機能と病態における役割
―新たな視点からの創薬への応用―
久山 哲廣中山 貢一斎藤 尚亮木原 康樹西澤 茂小原 一男石塚 達夫
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 119 巻 2 号 p. 65-78

詳細
抄録

細胞機能の発現及び病態の発症やそれらの維持にプロテインキナーゼC(PKC)が関与していることはよく知られている.本稿では6つのトピックを採りあげPKCアイソザイムという観点からこれらの問題に焦点を当ててみた.斎藤はPKCδが細胞に加えられた刺激の違いにより,異なる細胞内部位にターゲティング(targeting)し,標的部位の違いによりそれぞれ異なる細胞機能を発現することを見いだした.木原はベンゾチアゼピン誘導体であるJTV519がPKCδを選択的に活性化させプレコンディショニング(preconditioning)に類似した抗アポトーシス現象を引き起こし心筋保護作用を表わすことを示した.久山はインターロイキン1受容体が活性化されるとPKCαが活性化されて誘導型NO合成酵素を発現させることをアンチセンス法を用いて示し,PKCαはトランスアクティベーション(transactivation)のステップに関与している可能性を提示した.西澤はイヌ大槽内2回自家血注入による脳血管攣縮モデルを作製し,攣縮発生初期にはPKCδが,攣縮の維持にはPKCαが重要な役割を果たしていることを示した.小原はイヌ脳底動脈の伸展誘発性収縮に伴うミオシン軽鎖のリン酸化において初期にはミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)が,後期にはSrcファミリー~Rho/Rho-キナーゼ系を介するミオシンホスファターゼ抑制により見かけ上活性化されたMLCKおよびPKCαが関与することを示した.石塚は糖尿病治療薬として期待される副腎DHEAの作用がPI3-キナーゼ~PKCζ系を賦活化することにより糖の取り込みを引き起こしていること,さらに糖尿病性網膜症を合併している患者においては血小板内PKCβ含量が高く血小板凝集亢進に関与している可能性を示した.十余種のPKCアイソザイムのうち,特異な酵素群の活動やそれらの相互作用が重要であることが示された.このことは,PKCアイソザイムの特異的活性の亢進や抑制する薬物の創製および,生命機能や病態への関わりの解明にとっても重要な知見になると考えられる.

著者関連情報
© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top