日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「薬物誘発性QT延長症候群回避のための薬理学的戦略」
ICH-S7Bドラフトガイドライン
橋本 宗弘
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2003 年 121 巻 6 号 p. 377-383

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抄録

ヒト用医薬品による心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性を評価するためのガイドライン(ICH-S7B)は,2001年5月から討議が始まり,公開意見聴取のためのStep 2文書が2002年4月に開示され,収集されたコメントに基づきガイドラインの最終化に向けた改定作業が現在なされているところである.抗不整脈薬以外の薬剤がQT間隔の延長とそれに伴うtorsade de pointesを含む心室性頻拍不整脈の副作用を惹起する事例が報告され,非臨床試験評価法を定めることは医薬品開発の大きな課題である.本ガイドラインは,薬剤のQT間隔延長の評価について,日米欧3極共通の試験計画の基本的なあり方と指針を与えるためのもので,その基幹をなすものは,非臨床試験成績や被験物質の化学的/薬理学的クラス分類の情報に基づき実施されるIntegrated Risk Assessmentである.Integrated Risk Assessmentの結果は,安全閾を基にして推定されるevidence of riskの大きさとして表され,臨床試験計画や臨床試験成績の解釈に寄与する.しかしながら,本ガイドラインの扱う分野の科学は急速に発展を遂げており,これらコンセプトについては,現在各極で進められているプロジェクトチームによるデータ収集の結果を考察し,より確かな科学的根拠に基づいた内容として完成される予定である.本稿では,本ガイドライン案について概括し,今後の課題について述べる.

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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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