日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
片頭痛治療薬エレトリプタン(レルパックス®)の薬理学的,薬物動態学的および臨床学的特徴
表 雅之
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2003 年 122 巻 1 号 p. 93-101

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抄録

エレトリプタン(レルパックス®)は,トリプタン系と呼ばれる新しいタイプの片頭痛治療薬である.エレトリプタンは,5-HT1B/1D受容体の活性化を介して,頭蓋血管を収縮させ,また,三叉神経からのニューロペプチドの遊離を抑制することにより,痛みの中枢への伝導を減少させると考えられている.エレトリプタンは,ヒト5-HT1B/1D受容体に対して選択的な親和性と強力なアゴニスト作用を示し,冠動脈と比較して頭蓋血管を選択的に収縮させることが麻酔イヌおよび摘出ヒト血管を用いた実験において確認された.5-HT1B/1D受容体に対する親和性および頭蓋血管に対する選択性はスマトリプタンより高かった.エレトリプタンは,また,麻酔ラットの三叉神経を電気刺激したときに頭蓋の硬膜に発現する血管透過性の亢進をスマトリプタンと同程度抑制した.エレトリプタンをヒトに投与したときの吸収は早く,高い生物学的利用率を示した.臨床試験においては,速やかな頭痛の改善効果と再発抑制効果を示し,また,日常生活への支障度を片頭痛の随伴症状である嘔気·嘔吐·光過敏とともに改善した.エレトリプタンを長期間,複数回の発作に対して投与しても頭痛改善率の低下または副作用発現率の増加は見られなかった.エレトリプタンの安全性に問題はなく,認められた有害事象のほとんどは中等度以下であった.

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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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