日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「受容体・チャネル遺伝子の改変修飾と疾病・治療モデル」
ノックアウトマウス研究から明らかにされる痛み受容におけるヒスタミン受容体の役割
谷内 一彦Izadi Mobarakeh Jalal倉増 敦朗櫻田 忍
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2003 年 122 巻 5 号 p. 391-399

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抄録
ヒスタミンに関する新しい知見としてH4受容体が見つかり,ヒスタミンの作用は4種類のGタンパク質共役型受容体(GPCR,H1(Gq/11),H2(Gs),H3(Gi),H4(Gi))を介して起こることが明らかになった.痛みの受容には多くの分子が影響を与えるが,ヒスタミンもそのひとつである.その作用点は,第1次求心性線維と中枢ヒスタミン神経系である.ヒスタミンは痒みとの関係が強調されているが,痛みにも関与していることも古くから知られている.H1受容体は主に第1次求心性線維上にあり,末梢から情報を脊髄や上位中枢へ効率よく伝達する役目を担っている.また脊髄や上位中枢にはH1受容体やH2受容体が存在して興奮性の作用を協調して担っている.特に中枢ではH1,H2受容体ともに大脳皮質の機能賦活作用に関係している.ヒスタミン神経は視床下部後部の結節乳頭核にあり,神経伝達物質として,睡眠·覚醒·自発運動量,食欲の抑制,情動,体温調節,神経内分泌などに関係している.我々は数多くあるヒスタミン神経の機能を促進性と抑制性作用に分類している.促進性作用として覚醒,認知機能,痛みや痒み受容機能に関係し,抑制性の作用として食欲の抑制,ストレスやメタアンフェタミンによる過興奮の抑制に関係している.最近,ヒスタミン関連遺伝子のノックアウトマウス(KO)が開発され小動物における生理的·病態生理的研究の新たな展開が生じている.本総説ではヒスタミン関連遺伝子KOマウス研究を用いた我々の研究から,H1,H2受容体を介した痛み受容のメカニズムについて概略する.
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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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