日本薬理学雑誌
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ミニ総説「アルツハイマー病治療薬の現状と今後の展開」
動物PETによるアルツハイマー病治療薬の評価の可能性
塚田 秀夫
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2004 年 124 巻 3 号 p. 153-161

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抄録
アルツハイマー病(AD)に伴う痴呆症状の改善および進行遅延を期待して,様々な「抗痴呆薬」による薬物治療が試みられている.AD患者の脳では情報伝達機能を司る多くの神経伝達物質のうち,特にアセチルコリン(ACh)作動性神経が変性·脱落して,ACh合成酵素(Choline acetyltransferase: ChAT)の活性が著しく低下しており,このACh神経伝達の低下がADの痴呆症状に深く関与している事が示唆されてきた.その対処療法として「ACh補充療法」が1980年代から検討され始め,その中で最も注目されたのがACh分解酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害薬である.古典的なAChE阻害薬であるフィゾスチグミンは,スコポラミン等のACh受容体アンタゴニストで低下した学習·記憶能力を改善することから,抗痴呆薬の候補化合物として期待されたが,その低い脳移行性と短い作用時間から医薬品にはならなかった.その欠点を克服して抗痴呆薬として最初に承認されたAChE阻害薬はタクリンであった.しかし,タクリンは肝機能障害を高頻度に引き起こし,長期連投が前提となる抗痴呆薬としては不向きである.その後,数々のAChE阻害薬の治験が試みられた結果,現在国内で臨床使用可能な治療薬としてドネペジルが登場した.この総説では,覚醒サルを対象にしてドネペジルを始めとするAChE阻害薬の薬理効果を,PETを用いて[15O]H2Oを用いた体性感覚刺激に対する脳血管の反応性,[11C]MP4Aを用いたAChE活性,[11C](+)3-PPBを用いたムスカリン性受容体結合を計測すると共に,マイクロダイアリシスを用いたAChの濃度,さらには行動評価まで総合的に評価した結果を例示して,PETの医薬品開発における可能性を検証する.
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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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