日本薬理学雑誌
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ミニ総説:神経系におけるインスリンシグナリングとその役割
脳老化とインスリンシグナル
高島 明彦
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2005 年 125 巻 3 号 p. 137-140

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抄録

脳老化はアルツハイマー病発症以前に引き起こされ,そこでは嗅内野に神経原線維変化が生じている.アルツハイマー病では脳老化に続きβアミロイドがこの脳老化を加速し,神経原線維変化を嗅内野から辺縁系,新皮質へと拡げることで痴呆症などの症状が出現する.インスリンシグナルの低下はGSK-3βの活性化を伴い脳老化を引き起こす要因となっている.アルツハイマー病では脳老化と更にβアミロイドによるインスリンシグナルの低下が重なり,神経原線維変化,神経細胞死,シナプス消失を引き起こし,痴呆症を引き起こすことが考えられる.近年,II型の糖尿病がアルツハイマー病の危険因子であるというのはインスリンシグナルの低下が脳老化を引き起こしているためβアミロイドによってアルツハイマー病を引き起こしやすくなっているからではないかと推測される.

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