日本薬理学雑誌
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私のテーシスから
薬物動態/薬力学パラメータ解析による水虫治療薬の薬効評価
―経口抗真菌薬の薬物動態と皮膚真菌症に対する治療効果―
祖父江 聡関口 金雄鍋島 俊隆
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2005 年 125 巻 5 号 p. 291-295

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抄録

感染症の治療において薬剤が作用するためには,感染している病巣に薬剤が移行して薬理作用を示さなければならない.最近,抗菌薬に関して,動物モデルやヒトにおける薬物動態/薬力学についての検討が行われ,投与量や投与法の根拠となる理論が構築されつつある.抗真菌薬についても,全身に真菌を感染させた動物モデルを用いて薬物動態/薬力学の検討が行われるようになり,フルコナゾール等のトリアゾール系抗真菌薬では血中の濃度時間曲線下面積/最小発育阻止濃度が,深在性真菌症に対する治療効果と最も関連する薬物動態/薬力学パラメータであることが報告されている.皮膚真菌症の治療には,真菌の主な生息部位である角質層への薬物の移行が重要であり,また角質層の主成分であるケラチンに結合していない活性型の存在が治療効果に密接に関連していると考えられる.本研究では,フルコナゾールを投与した時の治療効果が試験管内での活性から推測されるよりもはるかに高い理由を検討するために,モルモットにフルコナゾールを経口投与した後の薬物動態(皮膚内分布),およびヒト角質ケラチンとの結合性をイトラコナゾールおよびグリセオフルビンと比較し,抗真菌薬の皮膚真菌症に対する治療効果に関連する薬物動態/薬力学パラメータについても考察した.フルコナゾールは経口投与後,角質層に速やかに,かつ良好に移行し,ケラチンに非結合の活性型として高濃度に存在することが確認された.このフルコナゾールの優れた皮膚内分布特性がその治療効果に大きく寄与していると考えられた.また,皮膚真菌症に対する治療効果には,深在性真菌症の場合と同様に,活性型の濃度時間曲線下面積/最小発育阻止濃度が関連しており,効果の基準になることが示唆された.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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