日本薬理学雑誌
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実験技術
炎症性骨破壊における三次元骨梁構造解析の方法と意義
木本 愛之
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2006 年 127 巻 4 号 p. 289-296

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抄録

これまで,骨の解析にはDEXA法に代表される二次元的骨密度の測定が用いられてきたが,近年,マイクロCT(micro-computed tomography,μCT)および三次元骨梁形態計測ソフトウェアを用いた解析により,三次元的な骨梁の構造を非破壊的に解析することが可能となった.今回我々は,μCTを用いてアジュバント関節炎モデルにおける骨破壊像の解析を行うことで,これまであまり行われていなかった炎症性骨破壊の解析を試みるとともに,プロスタグランジンの産生酵素であり,破骨細胞分化に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する薬物の骨吸収・破壊に対する作用をアジュバント関節炎モデルで検討した.このモデルでは足根関節部の重篤な骨破壊が認められ,踵骨海綿骨領域の骨梁体積率(BV/TV),骨梁表面構造(TBPf)等の骨梁形態計測パラメータはいずれも悪化していた.この様な病態に対して選択的COX-2阻害薬セレコキシブは,いずれの骨形態パラメータも有意に改善したが,選択的COX-1阻害薬SC-58560は改善作用を示さなかった.以上より,アジュバント関節炎モデルの三次元骨梁解析を試みた結果,本モデルにおける骨梁構造として骨質の脆弱性が示され,また,本モデルの骨破壊においてCOX-2の関与が示され,選択的COX-2阻害薬は炎症性骨破壊に対して有用であることが示唆された.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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