日本薬理学雑誌
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特集:動物実験指針
痛み・苦痛・安楽死の評価と基準
松田 幸久
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2007 年 129 巻 1 号 p. 19-23

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抄録

研究に使用される実験動物の福祉に対する社会的関心が高まっている.人類および動物の健康と福祉の増進のためには動物実験は不可欠ではあるが,実験動物が命あるものであることにかんがみ,1)動物を用いない方法を検討すること,2)実験に使用する動物の数を削減すること,3)実験動物が被る苦痛をできるだけ軽減することが求められている.このような状況の中で2005年6月に「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され,上記1)~3)が取り入れられた.改正された法律は2006年6月1日に施行され,それにともない「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」も改正され,法律の施行と同時に告示された.しかし,法律,基準は実験動物の飼養保管に対する規制であり,動物実験にまでは踏み込んでいなかった.そのため文部科学省は「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」を告示し,各研究機関が機関内規程を作成し動物実験を自主的管理するように求めた.厚生労働省および農林水産省も同様の基本指針を告示した.文部科学省,厚生労働省の基本指針を受けて日本学術会議は,各研究機関が機関内規程を作成する際の参考となるような全国統一の動物実験ガイドライン(動物実験の適正な実施に向けたガイドライン)を作成した.ガイドラインは動物実験計画書の作成,審査に当たって実験処置により実験動物が被る苦痛の程度を評価すること,評価にあたっては苦痛分類の基準を使用することを求めたが,わが国には統一した苦痛分類はないため,SCAWの苦痛分類を参照するように記した.しかし,SCAWの苦痛分類は今から20年前に北米の科学者達により作られたものであり,そこに記述されている内容はわが国の現状とは異なるところも多い.そのため国立大学法人動物実験施設協議会は2004年にわが国の現状に則するようにSCAWの苦痛分類に関する解説を作成した.そのためSCAWの苦痛分類を参照する際にはSCAWの苦痛分類に関する解説も参照していただけるよう本特集においてその一部を紹介した.

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