日本薬理学雑誌
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特集:血管病の分子機構と新たな治療戦略
RLPの炎症惹起作用の解明とその制御
吉田 雅幸
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2007 年 129 巻 3 号 p. 167-170

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抄録
近年,高レムナントリポタンパク血症が動脈硬化症の危険因子として注目されている.1980年代初頭より血漿中性脂肪値が独立した冠動脈疾患の危険因子であることが報告されているが,その後,中性脂肪に富むリポタンパク(TG-rich lipoprotein,TRL)の中でも腸管由来のカイロミクロンと肝臓由来のVLDLが部分的に水解されて生じるレムナントリポタンパク(RLP)が食後高脂血症の主体として動脈硬化症に重要な役割を果たすことが知られるようになった.このRLPを単離する手っs法の開発を契機に培養細胞や動物モデルにおけるRLPの炎症惹起作用が最近明らかにされ,抽出したRLPが末梢血の単球細胞に作用し,その接着現象を亢進させること,また,血管平滑筋細胞に対してはその増殖を著明に亢進させることなどを報告した.さらに,ApoB48受容体を介してマクロファージの泡沫化を促進することを解明した.また,血小板や血管内皮細胞に対する影響も報告があり,動脈硬化症の進展に関与することが示唆される.しかし,RLPはサイズ・組成等,きわめて不均一であり,どのようなサイズ,アポリポタンパク/脂質組成を持った粒子がこれらの作用を引き起こすかはまだはっきりとは分かっていない.今後はRLPに含まれる活性中心の同定とその作用機序の解明が研究の中心になると思われる.
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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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