日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(1) 標的探索
X線結晶構造解析からStructure-Based Drug Designへの応用と展開
木下 誉富
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2007 年 129 巻 3 号 p. 186-190

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抄録
Structure-Based Drug Design(SBDD)は,薬物を得るまでに合成すべき化合物を合理的に絞り込むことができる創薬手法であり,関連する諸技術の進歩により急速に定着してきた.具体的な手順としては,X線結晶構造解析により薬物候補化合物-標的タンパク質の結合様式を原子レベルで可視化し,その構造情報を正確に抽出して薬物設計を行っていく.著者らはアデノシンデアミナーゼのSBDD研究において,わずか2ステップで約800倍の活性を持つ阻害薬の創出に成功した.もちろんX線結晶構造解析に基づくSBDDも万能の創薬手法ではない.膜タンパク質の結晶化が困難を極めること,タンパク質の構造変化に対応できないこと,阻害薬から薬剤への過程には有効に働かないことなど問題がある.しかし,周辺の技術革新は目覚しいものがあり,万能型SBDDが完成する日がすぐそこまで来ている.
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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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