日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ(14)高脂血症
非アルコール性脂肪性肝疾患, 肝炎に対する薬物療法について
寺井 崇二松本 俊彦坂井田 功
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2007 年 129 巻 4 号 p. 271-275

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抄録

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肝硬変症に進行する病態であり,その病態としてFree fatty acid(FFA),Tumor necrosis factor-α(TNF-α),レプチン,レジスチンの上昇とアディポネクチンの低下が報告されている.これらの変化は体重の減量によって可逆的で,NASHの改善につながることが知られているが,実際には生活習慣の改善が難しい症例が多く,NASHの病態から考えた薬物療法が必要とされている.薬物療法は4つの方向性が考えられる.(1)インスリン抵抗性の改善(インスリン抵抗性改善薬),(2)脂肪酸生合成の抑制と肝内に蓄積した脂肪酸の燃焼(高脂血症薬),(3)脂肪酸の代謝過程で生じた酸化ストレスからの保護(抗酸化剤や肝庇護剤)である.(4)さらに抗NASH作用を持つアディポネクチンのレセプターに対するアゴニストや抗TNF-α剤なども,今後,検討すべきだろう.また,肝線維化抑制の側面より,アンジオテンシンIIレセプター拮抗薬が,NASHにおける肝線維化抑制薬として作用する可能性が期待される.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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