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日本薬理学雑誌
Vol. 129 (2007) No. 4 P 287-297

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http://doi.org/10.1254/fpj.129.287

新薬紹介総説

エンテカビル(ETV)はグアノシンのヌクレオシド類縁体であり,経口投与で有効な抗ウイルス薬である.本薬はB型肝炎ウイルス(HBV)に選択的な阻害作用を示し,他のウイルスに対する阻害作用は弱い.ETVは細胞内のキナーゼによってリン酸化され,活性体であるETV三リン酸(ETV-TP)となる.ETV-TPは天然基質のデオキシグアノシン三リン酸と競合し,HBV DNAポリメラーゼが有する3つの機能活性全てを阻害すると共にウイルスDNAに取り込まれてその伸長を停止させHBV複製を阻害する.HepG2.2.15細胞を用いたin vitro試験における本薬のHBV複製阻害のEC50値は0.00375 μMであり,ラミブジン(LVD)のEC50値0.116 μMに比し約30倍強い活性を示した.一方,本薬の細胞性DNAポリメラーゼα,β,γ,δ,εに対する阻害作用は弱いかまたは阻害作用を示さず,肝細胞に対する毒性の指標であるCC50値はEC50値の約8,000倍高かった.本薬とLVDとの間には弱い交差耐性が認められたが,本薬はLVD耐性ウイルスに対しても臨床曝露量で有効性を示した.ウッドチャックおよびアヒルのB型慢性肝炎モデルにおいて,ETVは0.5または1 mg/kgの1日1回投与によりいずれのモデルのウイルスDNA量も検出限界未満まで低下させた.国内臨床試験において,本薬0.5または1 mgの1日1回52週間投与によりヌクレオシド未治療患者およびLVD不応患者における本薬の有効性と安全性が確認された.また海外臨床試験において,LVD耐性HBVを有さないヌクレオシド未治療患者に本薬0.5 mgを1日1回96週間投与しても耐性の発現はみられなかった.以上の成績より,ETVは強力な抗HBV活性と良好な安全性を有し,また耐性発現が低いことからB型慢性肝炎の治療に新たな選択肢を提供する抗ウイルス薬と考えられた.

Copyright © 2007 公益社団法人 日本薬理学会

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