日本薬理学雑誌
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特集:行動薬理学入門
不安関連行動の評価法
山口 拓吉岡 充弘
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2007 年 130 巻 2 号 p. 105-111

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抄録

様々な実験的ストレスを実験動物に負荷し,不安や恐怖を誘発させることによって,これに伴って発現する不安関連行動を評価する方法は,抗不安薬をスクリーニングするために開発された.現在では薬効評価のみならず,遺伝子改変動物や疾患モデル動物の情動機能,特に不安関連行動の行動学的表現型を検索するためのテストバッテリーにも応用されている.不安関連行動の評価においては,装置の形状や実験環境などの設定条件,あるいは被験薬物に含まれる抗不安作用以外の薬理学的プロファイルが結果に大きく影響することから,その結果の解釈には注意する必要がある.また,照明強度や実験装置への馴れなどの実験環境要因によっても,指標となる不安関連行動のパラメータは大きく変動する.現在使用されている不安関連行動の評価系においては,ベンゾジアゼピン系抗不安薬が不安を軽減させる方向にパラメータを変化させるという点に関して共通している.しかし,これらの評価法の多くは正常な実験動物に実験的ストレスを負荷して誘発された不安・恐怖を評価しているため,その限界を念頭におかなければならない.したがって,病的な不安,すなわち不安障害を想定した基礎研究のためには,遺伝的要因と環境要因を包含した臨床像により近く妥当性の高い“不安障害”の疾患モデル動物の作製が必要である.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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