日本薬理学雑誌
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特集:生活習慣病から急性疾患に至るまでの血管内皮細胞障害の重要性
敗血症性ショックにおける血管内皮細胞の機能異常
松田 直之山本 誠士畠山 登服部 裕一
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2008 年 131 巻 2 号 p. 96-100

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抄録
敗血症は感染を基盤とする全身性炎症反応症候群であり,ショックや多臓器不全に移行する重篤な病態である.重篤化した敗血症に対する根治的な治療法は現在も確立されておらず,未だ敗血症は集中治療領域での死因の第1位の病態である.敗血症に合併するショックの初期病態はNOやプロスタノイドの産生による体血管抵抗の減弱した血流分布異常性ショックである.しかし,敗血症の持続により血管内皮細胞障害が進行すると,ショック病態は体血管抵抗の高い末梢循環の損なわれたcold shockへ移行する.この血管内皮細胞障害を導く重要な因子として,血管内皮細胞のアポトーシスが関与する.敗血症血管では,Aktの活性が損なわれる傾向があり,血管内皮細胞のホメオスタシスが障害されるとともに,Badのリン酸化の低下によりアポトーシスが進行する.さらには,血管内皮細胞におけるDeath受容体ファミリーの細胞膜発現が高まり,FADDの増加とc-FLIPなどの抗アポトーシス因子の低下を伴うことにより,カスパーゼ8とカスパーゼ3が活性化する.このような敗血症病態における血管内皮細胞のアポトーシスの治療は今後注目されると考えられる.Akt活性を高めるHMG-CoA還元阻害薬の臨床応用や,カスパーゼ8およびカスパーゼ3,さらにはFADDの阻害を標的としたsiRNAを含めた創薬が期待される.
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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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