2008 年 132 巻 2 号 p. 100-104
VEGFあるいはVEGF受容体を阻害し,がんの血管新生を抑制する抗がん薬の開発が進んでいる.E7080は強力なマルチキナーゼ阻害作用を有し,血管新生に重要なVEGFおよびFGF,PDGF,SCFの受容体に選択性が高いことを特徴とする化合物である.ヒトがん細胞株を移植したヌードマウスの検討では,肝がん,肺がん,大腸がん,乳がんなどのモデルにおいて優れた抗腫瘍効果が,マウス大腸がん株同所移植モデルでは延命効果が明らかにされている.また,肺がんモデルにてプラチナ製剤と併用することで,腫瘍縮小効果の相乗的な増強が認められている.一方,マウス浮遊内皮細胞は,E7080投与により血液中の数が顕著に変動することから,血管への作用を検証する新たなバイオマーカーになると思われる.近年の研究で,腫瘍内血管の構造と,がんの悪性度や血管新生阻害薬の有効性との関連が明らかにされつつある.浮遊内皮細胞や腫瘍内血管研究の,臨床での新たな展開に期待したい.