日本薬理学雑誌
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特集:健康食品の薬理学―その基礎研究から起業独立まで
安定・持続型ビタミンCの発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程
山本 格
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2008 年 132 巻 3 号 p. 160-165

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抄録
ビタミンC(アスコルビン酸)は,酸素および活性酸素あるいは,その反応物質と容易に化学反応(酸化還元反応)を起こし,相手を還元することがその役割である.人類は1200~800万年前に進化の過程でその合成能を失い,ビタミンCを外部から摂取しなければ生命維持ができなくなった.その結果,人類は酸素に弱いビタミンCを如何に酸化分解されていない状態のままで摂取し機能を発揮させるかという切実で大きな課題と向き合って来た.1989年,我々は安定・持続型のビタミンC誘導体(AA-2G)の創製に成功した.AA-2Gは1994年には,医薬部外品(美白化粧品)として,2004年には食品添加物として厚生労働省によりその使用が許可されるに至った.さらに,1999年には親油性ビタミンC誘導体(6-Acyl-AA-2G)の合成に成功し,現在その工業的生産法と用途開発が進行している.近年,健康や食の安全,環境保全への意識が高まる中,国立大学の特殊行政法人化に伴い,大学発ベンチャーが奨励される状況となってきた.それを受けて,AA-2Gの発明者とその仲間は,種々の有用な新規ビタミンC誘導体,ならびに疾病予防を目的とした新規機能性物質の研究,リラクゼーションを目的とした研究開発,商品開発ならびに販売事業を行うべく起業(2004年9月)し,ベンチャー企業支援施設である「岡山リサーチパークインキュベーションセンター,ORIC」に入居し活動を開始した.本稿ではビタミンC誘導体の発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程を述べる.
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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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