抄録
がん領域に「分子標的薬剤」が盛んに導入されている.なかでも,上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)ファミリーと血管内皮成長因子受容体(vascular epidermal growth factor:VEGF)に対する薬剤が注目される.EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブまたはゲフィチニブ,EGFR抗体であるセツキシマブ,EGFR type2(HER2)抗体であるトラスツズマブ,VEGF抗体であるベバシズマブ,VEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるソラフェニブなどは,非小細胞肺がん,乳がん,大腸がん,腎細胞がんなどで,標準的治療法に加えられ,本邦でも承認されている.標的分子の状況から効果が期待できる患者集団を選択することは,これら分子標的薬剤の治療効果を向上させ,効果が期待されない症例に別の治療機会を与える上で重要である.