日本薬理学雑誌
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総説
神経系細胞におけるcAMPによるERK1/2活性化のシグナル伝達について
小原 祐太郎中畑 則道Philip J.S. Stork
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2009 年 133 巻 2 号 p. 63-68

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抄録

Mitogen-activated protein kinase(MAPK)ファミリーに属するextracellular signal-regulated kinase(ERK)1/2は,細胞外の様々な刺激に応答し,細胞増殖,分化,生存促進作用などを媒介するリン酸化酵素である.また最も代表的なセカンドメッセンジャーであるcAMPは,様々な神経伝達物質やホルモン刺激などにより産生され,外界からの刺激に対する細胞応答を媒介する.cAMPによりERK1/2が抑制される細胞が存在する一方,逆にcAMPを介してERK1/2が活性化される場合もある.神経系の細胞においては後者の場合が多く,神経細胞の分化,生存,記憶学習に関連する様々な遺伝子の発現促進作用などにERK1/2が関与する.そこで,本稿ではcAMPによるERK1/2の活性制御機構を低分子量Gタンパク質のRasとRap1,さらにそれらのエフェクター分子であるRafの役割を中心に解説する.神経系細胞のモデル細胞として汎用されているPC12細胞においては,cAMP/PKA/Src/Rap1/B-Rafのシグナル伝達経路がcAMPによるERK1/2の活性化とPC12細胞の分化に必須なものと推定される.一方,小脳顆粒神経細胞においては,cAMP/PKA/Ras/B-Rafのシグナル伝達経路がERK1/2の活性化に重要な役割を担っており,Rap1の役割は部分的であることが示唆される.以上のように,PC12細胞,小脳顆粒神経細胞ともにcAMPを介してERK1/2の活性化を引き起こすが,PC12細胞においてはRap1が,そして小脳顆粒神経細胞においてはRasが中心的にcAMPによるERK1/2の活性化を媒介しており,cAMPが細胞特異的に2種類の低分子量Gタンパク質を巧妙に使い分けているものと考えられる.

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