日本薬理学雑誌
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特集:下部消化管疾患の病態研究とターゲットバリデーション
炎症性腸疾患における腸管マクロファージの病的役割
鎌田 信彦日比 紀文
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2009 年 133 巻 4 号 p. 186-189

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抄録

消化管は腸内細菌との共生関係にある特殊な臓器であり,他の組織とは異なり,常に抑制性の免疫が優位になっている.近年,この腸管特異的抑制性免疫システムにおいて,腸管マクロファージ(Mφ)が重要な役割を担っていることが明らかになってきた.一方で,腸管Mφの抑制能の破綻は腸内細菌に対する過剰な免疫応答を惹起し,炎症性腸疾患のような腸管慢性炎症の引き金となる.著者らは,クローン病の腸管粘膜において自然免疫関連受容体であるCD14を高発現した特殊なMφを同定した.本細胞は腸内細菌刺激により過剰なIL-23産生することで,腸管T細胞の過剰な活性化を誘導することが明らかになった.さらにIFN-γは腸管Mφの分化に影響を及ぼし,IFN-γ存在下で分化誘導されたMφはIL-23高産生炎症性Mφとなる.その結果,異常分化を遂げた腸管MφはIL-23を介してさらにIFN-γ産生を亢進さる.このように,クローン病腸管粘膜局所では,腸管Mφを中心とし構築された炎症性フィードバックサイクルが病態形成に深く関与していると考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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