日本薬理学雑誌
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特集:下部消化管疾患の病態研究とターゲットバリデーション
下部消化管炎症における消化管ペプチドの役割
東 泰孝竹内 正吉
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2009 年 133 巻 4 号 p. 199-202

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抄録

クローン病および潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患は,緩解と再燃を繰り返す慢性の疾患である.原因は未だ完全には解明されていないが,免疫異常,特に粘膜免疫系の過剰な反応によって誘発される可能性が示されている.一方,消化管には様々な機能的ペプチドが存在し,消化管における消化,吸収,運動などの生理機能を調節する.これら消化管ペプチドは消化管の粘膜固有層あるいは粘膜下組織に存在する各種免疫担当細胞より産生されることから,近年,消化管ペプチドによる免疫系機能調節についての知見が増加している.今回,炎症大腸炎モデルを用いて消化管ペプチドの役割を検討したところ,PACAP,VIP,CGRPおよびグレリンなどの消化管ペプチドは大腸炎に保護作用を示すことが明らかとなった.一方で,アディポネクチンおよびレプチンなどのペプチドは大腸炎を増悪させることが示され,様々な消化管ペプチドが炎症性腸疾患に関与することが明らかとなってきた.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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