日本薬理学雑誌
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特集:下部消化管疾患の病態研究とターゲットバリデーション
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)誘起小腸傷害の病態生理:関節炎発症時における小腸傷害の増悪
加藤 伸一天ヶ瀬 紀久子竹内 孝治
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2009 年 133 巻 4 号 p. 203-205

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抄録

非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal antiinflammatory drug:NSAID)は胃のみならず小腸にも重篤な傷害を惹起することが知られており,臨床において問題になっている.NSAIDによる小腸傷害の病態には,シクロオキシゲナーゼ阻害によるプロスタグランジン(PG)低下を背景に,粘液分泌の低下や小腸運動の亢進,腸内細菌の小腸粘膜への浸潤・接着,誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)発現の増大に伴う一酸化窒素(NO)の過剰産生,ならびに好中球浸潤などの種々の炎症反応が関与していることが明らかになってきた.一方,臨床において関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者では他のNSAID使用者に比べてNSAIDによる胃傷害の発生頻度が高いことが知られており,この現象はRAの実験動物モデルとして知られているアジュバント関節炎ラットを用いた基礎研究でも再現されている.胃の場合と同様に,NSAIDにより誘起される小腸傷害も関節炎ラットでは著明に増悪した.また,関節炎ラットではNSAIDによる小腸傷害の発生が正常ラットに比べてより早期から認められた.関節炎ラットの小腸粘膜では平常時から明らかなiNOS発現が認められ,Toll-like receptor(TLR)4発現も正常ラットと比較して増大していた.これらの知見から,関節炎ラットではTLR4発現の増大に伴いiNOS発現が平常時から増大しており,その結果小腸傷害の発生が早まり,最終的に増悪に繋がったものと推察される.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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