日本薬理学雑誌
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特集:Gタンパク質共役型受容体の新規機能
Gタンパク質共役型受容体を介したホスホリパーゼCシグナル伝達系に対する抑制性調節機構
松岡 功伊藤 政明
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2009 年 134 巻 5 号 p. 254-258

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抄録

ホスファチジルイノシトールに特異的なホスホリパーゼC(PLC)は,三量体Gタンパク質のエフェクターの一つで,Gタンパク質共役型受容体(GPCR)で認識されたホルモンや神経伝達物質の情報を,Ca2+に依存した細胞内情報に変換し,興奮性生理反応を惹起する酵素として重要な役割を果たしている.このPLCシグナル伝達系の過剰な応答は,平滑筋収縮による血圧上昇や気道狭窄,分泌細胞からのケミカルメディエーターの放出亢進,血小板機能亢進など様々な病態と関連した反応を引き起こすことから,これらを抑制的に調節することは疾病の治療戦略として用いられてきた.GPCRの刺激効果はGαqと各Gβγでシグナル伝達が行われPLCを活性化する.GPCRの下流で働く代表的なエフェクターであるcAMP合成酵素のアデニル酸シクラーゼが,抑制性Gタンパク質のGiにより負に制御されるのに対し,PLCシグナル伝達系を抑制するGタンパク質は存在しない.しかし,他のGタンパク質共役型受容体の刺激がcAMPやcGMPなどの細胞内情報伝達系を介し間接的にPLCシグナルを抑制することが知られている.最近,cAMPを介した他の受容体のクロストークや,PLC活性化に関わるGαqのスイッチを切るタンパク質の役割が解明された.さらに,疾患モデル動物やヒトゲノム解析の結果からPLCシグナル伝達系の負の制御機構の不全が循環器系疾患の発症に関わることが示唆されている.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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