日本薬理学雑誌
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134 巻 , 5 号
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特集:Gタンパク質共役型受容体の新規機能
  • 飯利 太朗, 槙田 紀子
    2009 年 134 巻 5 号 p. 244-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    古典的なGタンパク質共役受容体(GPCR)のtwo-stateモデルでは,GPCRは活性型と不活性型との間で平衡状態にあり,各GPCR作動薬はその平衡状態をシフトさせる方向性からアゴニスト,インバースアゴニスト,アンタゴニストと分類されてきた.最近,GPCRは活性型,不活性型いずれにおいても無数の高次構造を取り得ると考えるmulti-stateモデルを支持するデータが集積している.このモデルでは,各作動薬はそれぞれユニークなGPCRの高次構造を認識して結合しこれを安定化させると考えられる.GPCRの個々の高次構造において潜在的にそれぞれ異なる機能を発揮すると考えられる.この考えに基づけば,あるユニークなアゴニストあるいは通常のアゴニストとアロステリックに作用する調節因子の作用のもとに,本来複数のGタンパク質を活性化するGPCRを介して,あるシグナル系のみを特異的に活性化(機能選択的活性化)することも夢ではない.今回,我々が疾患で発見解析したCa感知受容体に作用する自己抗体は,こうした機能選択的活性化を可能にするアロステリックに作用する調節因子であった.このきわめてまれな疾患の解析結果は,同様な機能選択的な活性化が生理的にも作動していることを暗示しているのかもしれない.さらに,GPCRの機能選択的な調節をターゲットとする薬剤の開発は,今後のGPCR作動薬分野の創薬における新しく重要な方向性を示していると考えられる.
  • 佐藤 幸治, 東原 和成
    2009 年 134 巻 5 号 p. 248-253
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    動物の嗅覚器には,外界の匂い物質と結合する嗅覚受容体が発現している.下等な線虫から高等哺乳動物に至るまで,嗅覚受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属する.嗅覚受容体と匂い物質が結合するとGタンパク質経路が活性化され,下流の環状ヌクレオチド作動性イオンチャネルが開口する.ゲノムプロジェクトの進行により,昆虫でも嗅覚受容体は7回膜貫通構造をもつことが明らかにされた.したがって,Gタンパク質経路を利用した情報伝達機構は全ての動物において,匂い受容における共通の分子基盤であると考えられてきた.しかしながら最近,昆虫嗅覚受容体は昆虫種間で広く保存されているOr83bファミリー受容体と複合体構造をとり,この複合体にはGタンパク質経路とは無関係に,匂いで活性化されるイオンチャネル活性が備わっていることが明らかとなった.マラリアなどの虫媒性伝染病は,汗や体臭を通して放散される匂い物質に誘引された昆虫の吸血により感染する.虫除け剤には,嗅覚受容体複合体が構成するチャネル活性を阻害する作用があることも報告された.今後,このような吸血昆虫が媒介する感染症の一次予防の観点から,嗅覚受容体複合体の活性制御機構の解明は,虫除け剤開発における最重要ターゲットになると思われる.
  • 松岡 功, 伊藤 政明
    2009 年 134 巻 5 号 p. 254-258
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    ホスファチジルイノシトールに特異的なホスホリパーゼC(PLC)は,三量体Gタンパク質のエフェクターの一つで,Gタンパク質共役型受容体(GPCR)で認識されたホルモンや神経伝達物質の情報を,Ca2+に依存した細胞内情報に変換し,興奮性生理反応を惹起する酵素として重要な役割を果たしている.このPLCシグナル伝達系の過剰な応答は,平滑筋収縮による血圧上昇や気道狭窄,分泌細胞からのケミカルメディエーターの放出亢進,血小板機能亢進など様々な病態と関連した反応を引き起こすことから,これらを抑制的に調節することは疾病の治療戦略として用いられてきた.GPCRの刺激効果はGαqと各Gβγでシグナル伝達が行われPLCを活性化する.GPCRの下流で働く代表的なエフェクターであるcAMP合成酵素のアデニル酸シクラーゼが,抑制性Gタンパク質のGiにより負に制御されるのに対し,PLCシグナル伝達系を抑制するGタンパク質は存在しない.しかし,他のGタンパク質共役型受容体の刺激がcAMPやcGMPなどの細胞内情報伝達系を介し間接的にPLCシグナルを抑制することが知られている.最近,cAMPを介した他の受容体のクロストークや,PLC活性化に関わるGαqのスイッチを切るタンパク質の役割が解明された.さらに,疾患モデル動物やヒトゲノム解析の結果からPLCシグナル伝達系の負の制御機構の不全が循環器系疾患の発症に関わることが示唆されている.
  • 中畑 則道
    2009 年 134 巻 5 号 p. 259-263
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    Gタンパク質共役型受容体は二量体化することや受容体会合タンパク質によってその活性が制御されるが,本稿では,トロンボキサンA2受容体(TP)の二量体化およびC末会合タンパク質による受容体機能の制御について解説する.TPにはTPαとTPβの2つのスプライシングバリアントが存在し,それらはホモおよびヘテロの二量体を形成した.TPαは比較的細胞膜に分布しやすいのに対してTPβは細胞内に留まりやすいが,これはTPβがプロテアソーム関連タンパク質と会合しやすく分解されやすいためと考えられる.一方,TPαとTPβのヘテロ二量体はTPαに比べて細胞膜に移行しづらく,TPβに比べると移行しやすい.すなわち,TPβはヘテロ二量体を形成することによってTPαの細胞膜移行を負に制御しているものと考えられる.一方,TPの細胞内C末端への会合タンパク質として新規タンパク質のKIAA1005が見出された.KIAA1005は細胞内でTPαおよびTPβと会合しており,そのmRNAの発現は全身に普遍的であり,特に胸腺で高かった.また,TPアゴニストのU46619によるextracellular signal-regulated kinase(ERK)1/2のリン酸化はKIAA1005の過剰発現により抑制された.さらに,TP刺激によるPI水解反応もKIAA1005の過剰発現により抑制されたが,M3ムスカリン受容体刺激による反応は抑制を受けなかった.加えて,KIAA1005によるTPシグナルの抑制作用の一部には,細胞膜TPの受容体数の減弱が考えられた.以上のように,TPの二量体形成やTP会合タンパク質KIAA1005により,TPを介するシグナル伝達が制御されることが示唆された.
総説
  • 杉本 忠則
    2009 年 134 巻 5 号 p. 265-270
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    薬物を併用した場合の相乗効果の評価を行う際に検定を用いることがあるが,薬物反応の理論的背景を考えると適切でない場合がある.受容体理論に従えば,薬物用量と反応値との関係は数式として記述することができる.2薬物が併用された場合も,受容体理論を展開し薬物用量と反応値との関係を数式化することができるため,薬物反応の理論に基づくデータ解析が可能である.今回紹介する解析手法は,効力の異なる2種類の部分作動薬あるいは余剰受容体がない完全作動薬が併用されたときに測定される反応値と理論的な反応値とを比較する手法である.本解析手法は実験データを理論式に非線形回帰させ反応を決定するパラメータを推定するものであるが,回帰させる理論式には相加効果からの解離度合いを示すパラメータが組み入れられている.なお,本稿では相加を2種類の薬物を併用した場合に各薬物が同一受容体に結合し独立に発現する反応の加算としている.解析により各パラメータの点推定値と95%区間推定値が得られるが,相加効果からの解離度合いを示すパラメータの大きさに対し薬理学的意味を考慮して検討することにより2薬物併用による効果が評価できる.
  • 西堀 正洋, 高橋 英夫, 森 秀治
    2009 年 134 巻 5 号 p. 271-275
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    High Mobility Group Box-1(HMGB1)は,細胞核内に局在するクロマチン結合性の非ヒストンタンパクとして同定され,クロマチン構造の維持機能や転写活性調節,DNA修復等に重要な働きをすると考えられていたが,1999年,Kevin Traceyらの研究グループが敗血症ショックの遅延性メディエータとして再発見し,以後種々の炎症性疾患における関与が次々に示唆されるようになってきた.脳梗塞急性期における血液―脳関門の破綻は,血管内皮細胞,ミクログリア,アストログリア,循環血中白血球の活性化とそれらの相互作用による脳内炎症反応によってもたらされると考えることができるが,このような過程における壊死細胞からのHMGB1の放出は脳内炎症において重要な働きをする可能性がある.最近相次いで報告されてきた脳虚血急性期の脳内HMGB1の動態と,HMGB1を標的としたshRNAや抗HMGB1抗体を用いた治療について,著者らの知見を中心に概説する.
実験技術
  • 山田 静雄, 吉田 徳, 伊藤 由彦
    2009 年 134 巻 5 号 p. 276-280
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    生体内において受容体への結合を介して作用する薬物では,循環血液中から標的臓器に分布後,受容体に結合しその結合量に依存して薬理作用を発現する.薬物の体内動態(pharmacokinetics:PK)は受容体近傍での薬物量を規定し,薬効の発現(pharmacodynamics:PD)はその受容体結合を基礎としている.In vivoにおける薬物の受容体結合は,薬物動態学的因子に加え,受容体を取り巻く内部環境因子や生理的神経調節機構などの様々な因子の影響を包含しているため,薬理作用特性を反映している.Ex vivo測定法においては,薬物を生体へ投与後,摘出した組織の受容体標品を用い,ラジオレセプターアッセイ法により受容体の選択的標識リガンドの特異的結合量を急速吸引濾過法により測定する.対照(vehicle投与)の特異的結合量との比較により,受容体結合量を見積ることができる.標識リガンドの結合パラメーターの変化から,薬物の受容体結合の様式や持続性を予測することができる.また,薬効発現臓器を含む諸組織における受容体結合の同時測定により,薬物の標的臓器への特異性を明確にできる.放射性標識リガンドを直接静脈内投与して,各組織の集積量を測定するin vivo測定法として,組織切片を用いるオートラジオグラフィ(ARG)法やポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)法がある.薬物前処理による標識リガンド集積量の減少率から,受容体結合量の大きさや時間推移を見積ることができる.Ex vivoおよびin vivo実験結果は,薬理効果の発現投与量,経時変化や持続時間などの薬理学的プロフィールとの整合性の検証により,その精度を確認することができる.In vivoにおける薬物?受容体結合の解析は,PKとPDの統合的指標として,創薬・育薬だけでなく,医薬品の適正使用のための有用な情報を提供すると考えられる.
創薬シリーズ(4) 化合物を医薬品にするために必要な薬物動態試験(その3) 代謝(4)(5)
  • 今井 輝子
    2009 年 134 巻 5 号 p. 281-284
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    Carboxylesterase(CES)は,エステル結合やアミド結合によって分子修飾された医薬品の代謝に重要な役割を果たしている.プロドラッグに代表される医薬品の分子修飾は,バイオアベイラビリティや薬効の改善を達成することが可能な創薬手法の一つである.本稿では,創薬を考える上で,代謝活性化の中心的役割を担っているCESの細胞局在性,基質特異性,種差,臓器差,個人差について概説する.
  • 吉成 浩一
    2009 年 134 巻 5 号 p. 285-288
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/13
    ジャーナル フリー
    薬物動態学的な相互作用の多くは代謝に関連したものであり,その大半はチトクロムP-450(CYP)の酵素阻害に基づくものである.CYPの阻害様式は,1)複数の基質による競合阻害,2)薬物の窒素を含む複素環がCYP活性中心のヘム鉄に配位することによる非特異的阻害,3)反応性に富む代謝物がCYPと複合体を形成することで不可逆的に酵素を不活性化する阻害,に大別される.CYP阻害に基づく相互作用は,治療効果の変化や重篤な副作用の発現に繋がることがある.したがって,より安全な医薬品の開発には,代謝に関わるCYP分子種の同定と共に,CYP阻害作用が欠かすことのできない評価項目となっている.本稿では,CYPの阻害様式と阻害に基づく相互作用の発現機序について,具体例を挙げて解説するとともに,創薬における相互作用評価法について簡単に紹介する.
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