2010 年 135 巻 3 号 p. 95-98
タンパク質アミノ酸システインの側鎖のチオール基におけるタンパク質修飾であるS-ニトロソ化は,一酸化窒素(NO)による直接的なタンパク質修飾による機能調節として,幅広く生体機能に関与している.セカンドメッセンジャーであるNOの作用として,これまでよく調べられてきたcGMP依存性の作用に加え,S-ニトロソ化は特に注目を集めている.心臓興奮収縮連関への影響だけでなく,心臓の電気活動を規定するイオンチャネルの機能へもS-ニトロソ化が影響することが最近明らかになりだした.NOはガス状分子であり膜を透過するが,局在化したシグナル経路が存在することも報告されている.そこで,本総説においては,心筋イオンチャネルへのS-ニトロソ化の関与についての最近の知見をまとめ,心臓活動電位への影響について考察したい.