日本薬理学雑誌
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135 巻, 3 号
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総説
  • 黒川 洵子, 浅田 健, 古川 哲史
    2010 年 135 巻 3 号 p. 95-98
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/14
    ジャーナル フリー
    タンパク質アミノ酸システインの側鎖のチオール基におけるタンパク質修飾であるS-ニトロソ化は,一酸化窒素(NO)による直接的なタンパク質修飾による機能調節として,幅広く生体機能に関与している.セカンドメッセンジャーであるNOの作用として,これまでよく調べられてきたcGMP依存性の作用に加え,S-ニトロソ化は特に注目を集めている.心臓興奮収縮連関への影響だけでなく,心臓の電気活動を規定するイオンチャネルの機能へもS-ニトロソ化が影響することが最近明らかになりだした.NOはガス状分子であり膜を透過するが,局在化したシグナル経路が存在することも報告されている.そこで,本総説においては,心筋イオンチャネルへのS-ニトロソ化の関与についての最近の知見をまとめ,心臓活動電位への影響について考察したい.
  • 山崎 大樹, 山本伸一郎, 竹島 浩
    2010 年 135 巻 3 号 p. 99-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/14
    ジャーナル フリー
    細胞内Ca2+ストアである小胞体からのCa2+放出は,リアノジン受容体とIP3受容体の2種のCa2+放出チャネルにより仲介され,様々な細胞機能を制御する.しかしながら,小胞体Ca2+放出の活性化,不活性化や生理的調節の分子機構,さらにはCa2+放出シグナルの時空間的多様性の発生機構やその情報が細胞機能に変換される機構には依然として多くの謎が残されている.数年前に当研究室で分子同定されたTRIC(trimeric intracellular cation)チャネルは,細胞内膜系に存在する新規膜タンパク質である.動物組織にはTRIC-AおよびTRIC-Bの2種類のサブタイプが独自パターンで分布し,多くの細胞系で両者の共発現が観察される.約300アミノ酸より構成されるTRICチャネルは3本の膜貫通セグメントを有し,N末端が小胞体内腔に,C末端が細胞質側に配向していることが予想され,さらにホモ3量体を形成する.高純度に精製したTRIC-Aタンパク質を人工脂質二重膜に再構築した電気生理学的検討において,TRIC-Aは一価陽イオン選択的チャネル活性を示し,細胞内膜系において主にK+透過性チャネルとして機能するものと考察される.TRIC-A欠損マウスはほぼ正常に成育・繁殖する.一方,呼吸不全による新生致死性を示すTRIC-B欠損マウスでは,II型肺胞上皮細胞における小胞体Ca2+放出の障害が原因となり,肺胞膨潤に不可欠なサーファクタント合成・分泌が障害される.さらに,両TRICサブタイプを同時欠損した変異マウスは胎生10日程で心不全となり,その変異心筋細胞では小胞体Ca2+過剰貯留などの小胞体Ca2+ハンドリングの破綻が観察される.Ca2+放出に際して小胞体内腔に発生する負電荷を瞬時に消去することが,Ca2+放出の効率化に必須であると予想されており,カウンターイオンによる電荷の中和が古くから想定されてきた.上述の実験結果は,TRICチャネルが小胞体Ca2+放出と同調してK+を小胞体内腔に導くカウンターイオンチャネルとして機能していることを示唆する.
実験技術
  • 鍋倉 淳一, 江藤 圭
    2010 年 135 巻 3 号 p. 104-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/14
    ジャーナル フリー
    従来のイメージング技術では生きた動物の内部で起きている現象をサブミクロンの解像度でとらえることは困難であった.2光子顕微鏡はこのような生体現象を捉えることができる強力なツールとして注目を集めている.そこで,本稿では2光子顕微鏡の動作原理,特徴と,この顕微鏡を用いたin vivoイメージング応用例について紹介する.2光子顕微鏡の動作原理である2光子励起過程は対物レンズの焦点でのみ起きるため,また,近赤外光を用いるため,低侵襲性で組織深部の構造物を観察することができる.2光子顕微鏡はこのような特殊な励起過程を誘導するために必要なフェムト秒パルスレーザーや外部光路を有している.また,大脳皮質の構造物のin vivoイメージングを行うためには動物に対し,観察窓の形成手術(頭蓋骨を薄く削るthin skull法,または頭蓋骨を取り除くcranial window法)を行う必要がある.それぞれの手術法には長所と短所があるため,目的によって手術法を使い分ける必要がある.観察窓を作成した動物に2光子顕微鏡を適用し,神経細胞やグリア細胞のin vivo形態イメージングや,カルシウムイメージングを用いた機能イメージングなどを紹介する.
創薬シリーズ(4)化合物を医薬品にするために必要な薬物動態試験(その5)その他(3)(4)
  • 山田 泰弘
    2010 年 135 巻 3 号 p. 109-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/14
    ジャーナル フリー
    薬物動態(DMPK)研究は,創薬の成功確率を高めるための重要な役割を担うだけではなく,戦略を左右することもあるので,DMPK研究が創薬のボトルネックになってはならない.そのために,DMPK試験の効率化と高速化が追求され,試験系の自動化や薬物濃度測定のハイスループット(HT)化が日々更新されている.本稿では,①探索段階でのDMPK試験の意義とHT分析の必要性,②HT分析へのアプローチおよび③HT分析での留意点について紹介する.
  • 戸塚 善三郎
    2010 年 135 巻 3 号 p. 113-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/14
    ジャーナル フリー
    MD臨床試験での薬物濃度分析法の液体クロマトグラフ質量分析法LC/MS/MSの測定条件および実施例について,加速器質量分析法AMSの機器の説明,原理および実施例について,陽電子放射断層撮影法PETの原理および実施例について記載した.「マイクロドーズ(MD)臨床試験の実施に関するガイダンス」の作成とその中で実施できる探索的臨床試験薬物濃度分析法の法的基盤を記載した.「日本初のマイクロドーズレベルの臨床試験」として実施したColdのフェキソファナジンおよびニカルジピンのLC/MS/MSによる濃度測定を記載した.NEDO MD PJが日本で最初に実施したHOTの14C標識体アセトアミノフェンおよび14C標識体トルブタマイド(投与量100μg/ 200nCi/body)のMD臨床試験ついて記載した.日本で早期に実施したHOTの11C標識体FK506および18F標識体FK960のPET臨床試験を記載した.これで日本でのMD臨床試験の基盤ができた.「マイクロドーズ臨床試験を活用した革新的創薬技術の開発」(NEDO MD-PJ)でのカセットドーズのLC/MS/MSによる濃度測定法により多剤併用のPK(MD-TD)予測,薬物相互作用(Drags-Transporter & CYP)予測,Genotype(PM-EM)PK/PD予測が可能であり,HOTの14C標識体のMD臨床試験の特徴としてMass Balance予測,MIST予測も可能であることを実証した.製薬会社のMD臨床試験の活用した創薬研究に期待する.
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