日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 アルツハイマー病治療薬の研究戦略
アルツハイマー病免疫療法の研究開発状況とBAN2401の薬効薬理
荒木 伸
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 136 巻 1 号 p. 21-25

詳細
抄録

アルツハイマー病の治療戦略としてアミロイドβ (Aβ)の生成や凝集を阻害すること,あるいはAβを除去することなどが考えられている.Aβを除去するという観点では,アミロイドβ免疫療法が最も妥当性が高いと考えられる.アミロイドβ免疫療法は,エラン社のDale SchenkらがヒトAPP高発現マウス(PDAPPマウス)にAβ1-42を免疫し脳内のアミロイド形成抑制,除去を示したことからはじまる.しかしながら,最初に治験されたAβワクチンAN1792は髄膜脳炎の発生により十分な薬効評価を行えず中止を余儀なくされた.その後,AβのN末端だけを抗原に用いるなど髄膜脳炎を発生しにくいことを想定したAβワクチンの開発が進んでいる.一方,抗体療法においては,多くのメーカー/機関により様々な部位をエピトープとする抗Aβ抗体の開発が進められている.その中で,我々は,スウェーデンの家族性AD患者から新たに見出されたArctic変異を有するAβ(Aβ E22G)の凝集性の高さに注目し,これから調製されたプロトフィブリルを抗原にして作製した抗Aβプロトフィブリル抗体mAb158(マウス抗体)からの創薬を進めてきた.mAb158はAβプロトフィブリルに高い結合能を示し,Tg-APP ArcSweマウス脳内のAβプロトフィブリル量を顕著に減少させたことから,mAb158のヒト化抗体(BAN2401)を作製しAD免疫療法として開発すべく様々な検討を行っている.

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top