抄録
医薬品開発において開発候補化合物の特性を評価する方法の1つに,用量反応関係の解析がある.広い用量範囲で用量反応関係を検討できるin vitro試験では,用量反応モデルを当てはめて推定されたパラメータを用いて化合物の特性評価が行われる.薬物の最大効果が実験系の最大効果に達しない部分作用薬では,用量反応モデルのパラメータの他に薬物の最大反応の程度を示す相対効果についても興味がある.創薬研究に広く用いられているin vitro試験のデザインを考慮し,相対効果を直接推定可能な用量反応モデルは提案されていない.本研究では,個体間変動が見られるサイトカイン産生抑制試験を想定し,4パラメータロジスティックモデルを拡張して,相対効果を設定したロジスティックモデルを提案した.シミュレーション実験により,既存法と提案モデルの性能を評価し,さらに実データへの適用を行い,既存法との比較により提案法の有用性を検討した.シミュレーション実験の結果,個体間変動の大きいパラメータにのみ変量効果を設定し,相対効果を直接推定するモデルを用いることで,相対効果がある程度大きい場合には,安定し,かつ精度の良い推定が可能であることが示された.また,実データへの適用により,既存法と同様の推定結果が得られた.以上より,サンプルサイズが小さいin vitro試験において,相対効果を設定したロジティックモデルは既存法と同様に適用可能であることが示された.