日本薬理学雑誌
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総説
硫化水素(H2S)−機能と医療応用−
木村 英雄
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2010 年 136 巻 6 号 p. 335-339

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抄録

H2Sは温泉や下水などで遭遇するあの卵の腐ったにおいの主で,毒ガスとして悪名高い.1989年と1990年に,牛,人,ラットの脳にH2Sが存在することを示した3報の論文をきっかけに,私たちは1996年に,H2S生産酵素cystathionine β-synthase(CBS)が脳に存在し,記憶のシナプスモデルである海馬長期増強(LTP)を誘導促進することから,neuromodulator(神経調節物質)としてのH2Sを提案した.翌年には,生産酵素cystathionine γ-lyase(CSE)が,胸部大動脈,門脈,回腸などの平滑筋組織に存在し,H2Sが弛緩作用を示すことから,平滑筋弛緩因子として報告した.昨年には,第3の生産酵素3-mercaptopyruvate sulfurtransferase(3MST)を発表し,脳や血管内皮における機能を提案した.H2Sにはシグナル分子としての働きに加えて,神経や心筋を酸化ストレスから保護し,インスリンの分泌制御,抗炎症作用,疼痛への関与など,その作用は多岐にわたっている.基礎研究が進む一方で,H2Sの医療応用への開発が進んでいる.ここでは,最近のH2S研究の進展について概説する.

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